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【お題】 早くも「梅雨入り」です

「児童ポルノ禁止法改定の真の目的は何か? 単純所持禁止、マンガ・アニメ「調査研究」への懸念」

 上のリンクを読んで。 児ポ法に反対するご意見はよく目にするのだけれども、部外者に説得力を持つかどうかでいうとちょっと疑問の残る議論が少なくないので、少し引いた目線でまとめられればと思って書いてみる。


 正式名称を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」という法律が、まず作品の単純所持を禁じ、まるで附則のごとく末尾に

 (5)被害児童の保護のための措置を講ずる主体及び責任の明確化

と掲げているのは何故か。


 児童の性的搾取、性的虐待を防ぐことが第一義で、そのために製作者販売者を撲滅することが目的となるのなら、所持を禁じることは意味がない。 児童買春に至っては関係すらない。 出版物やテレビ、映画等の製作者が不作為からそのような表現を用いてしまう場合を除けば、児童ポルノは意図的かつ継続的に製作されるのであり、その製作や流通は法規制のない国に移転することが合理的だ。 国外のサーバから購入作品をダウンロードして、鑑賞の都度キャッシュからデータを消去するサービスがすぐに始まるだろう。 そのために日本人児童が海外へ拉致・誘拐される事態まで容易に想像できる。 罪状が変わるだけで、性的搾取、性的虐待自体はながらえることができてしまう。


 単純所持禁止は、一方で、上に見たのと同様に、芸術家など表現者にとって日本国内における表現の禁止になる。 「篠山紀信さんにもネガごと捨ててもらう」という議員発言に端的に表れている。 會田誠にも作品の素材が入ったHDDごと捨ててもらうのだろう。 そうなれば、大家だろうが若手だろうが、製作拠点すら国内には置けないわけで、日本人作家による『合法的な作品』も国内の美術館や美術愛好家にとっては縁遠い存在になる。 最初から国内にないのだから、作品価値が認められた頃には既にオリジナルが日本になかったというケースの多い浮世絵の比ではない。


 単純所持禁止が『被害児童』を持たない他分野にまで拡張されるなら、それら他分野においても製作者、製作拠点と市場は国外に移転する。 およそ図像を用いた創作を志すのであれば、日本の美大等を志望するのは不真面目ということになる。 文学もそうだが、最初から『合法的な作品の創作』を志してアートの道を選ぶこと自体がアーティスティックではない。 製作者も購入者もいないので作品流通も国内ではペイしないのは自明のことだ。


 単純所持禁止は、もう一点、法の不遡及の原則に反して施行遥か以前の(篠山紀信栗山千明を撮った「神話少女」のような、あるいは物故した作家の)作品の所持にも適用され、また送りつけられたもの、そこに紛れ込んだものをも含むので、警察による捜査権の濫用を制限したとしても、恣意的に別件逮捕に利用することができるという法的問題を孕んでいる。


 同法が『本来の目的』からすればおそるべきザル法であり、『目的外』に機能することが強く懸念される理由は、そういうところである。